“環境破壊のない”小規模風力発電には反対しません!“環境破壊を伴う”大規模風力発電には反対します!
山田敏郎
私はある企業に入社して間もないころに(昭和50年初め)、不景気を機に、当時、30年後には石油が枯渇するということで、新しい研究開発テーマとして、エネルギー問題を検討した。
その時、ソフトエネルギー・パスの可能性として、太陽光発電、地熱発電、波浪発電、風力発電等を調査した。当時、風力発電は騒音(低周波含む)や環境破壊問題で国土の狭い日本には向かないであろうと結論していた。
それから約45年経った現在でも、その結論は変わっておりません。風力発電は騒音(低周波)問題、通信障害問題、環境破壊やメンテナンス問題等の様々な問題があり、巨大な風車を一旦設置したら、長期間環境に影響を及ぼし続けることになる。
そこで、本事業のような広域に影響を及ぼすような事業の計画時には、長期間(最低50年)での環境アセスメントを実施する必要がある。
たとえば、騒音はどの程度か、低周波の健康被害はどの程度か、木の伐採等に因る2次災害(土砂崩れ、洪水)の発生の恐れはないのか。
更に、木々の伐採や風車群の設置等による天候の変化(雨量、風向き、風速)、洪水等の災害の増加、動植物の変化等の可能性の有無、や最大自然災害(地震、台風、)を科学的に予測し、もしこれらの事故や災害が発生した時の責任体制の明確化・明示化(最低50年間での)が必要である。
この場合、組織名や役職名だけでは責任があいまいとなってしまう。数名以内(多くなると責任体制があいまいとなる)の個人名の責任者とその連帯保証人とのセット記載が必ず必要であると考える(毎年更新)。体制が変わったとき(知事の交代、運営企業の変更・撤退等)でも、責任が取れるシステムにしておく必要がある。
この問題は、風車を設置した場所だけの問題ではなく、広域に影響が及ぶので、風車運営企業や自治体のみならず、風車設置用に売却した地主やその仲介人にも責任が及ぶような契約とすべきである。
このような事業を提案するとき、 事業提案者は“環境に配慮して設置・運営する”と必ず住民等に説明するが、福島第一原子力発電所事故や熱海市伊豆山土石流災害でも明らかなように、一旦事故(被害)が発生すると、その責任のなすり合いが起こり、明確な責任を取らないような場合が多々ある。
広大な森林等を切り開き、そこに多くの巨大な風車を設置するような本事業の場合、甚大な環境変化を引き起こすことは容易に推測できる。事故が発生した場合、例え、地震や台風等の自然災害が直接的な原因であっても、現状変更(森林伐採、整地、設備の設置等)を行わなかった場合を事業開始前と比較しながら、現状変更後による被害の内容や程度とそれらの被害額を、科学的に裏付けしながら算定すべきである。
すなわち、現状変更して事業を開始しなかったならば、現状変更後による被害が発生しなかったはずであるので、その事業の継続者よりも事業の開始者の責任が最も重いといえよう。
そこで、事業開始に関与した者とそれらの連帯保証人の責任期間を、事業から離れた場合でも、本人の生存期間か事業から離れた年月から10年の短い方にすべきであると考える。当然のことながら、本事業に関係を続けている場合は、責任も継続する。
1~2基の風車しか設置していない場合でも、故障した風車をそのままに放置している状況を目にすることがある。非常に危険で、故障・老朽化した巨大風車は大きな凶器であり、このような状態を放置している事業者はもちろんのこと、事業の決定に関与した行政にも責任があると日頃感じている。
本事業のような多数の巨大風車群では、故障・老朽化した風車を補修や撤去等のメンテナンスを強制的に執行させる環境保全に関する法整備と責任の明確化が必要である。すなわち、事業のステークホルダーを明確にして、その責任体制を明確にしておく必要がある。
現状を考えると、本事業の巨大風車群の設置が広大な地域の環境破壊と変容を引き起こし、不十分な維持管理が周囲の安全を脅かし、地域の生態系を破壊し、自然災害の増加を引き起こす危惧がある。
このような恐れの大きい能登地区での大規模風力発電には反対する。